-脳卒中のステント新治療-


脳卒中のステント新治療

大きな脳動脈瘤

脳動脈の分かれ目などにできるこぶ(脳動脈瘤)は、くも膜下出血の原因となるため、破裂を防ぐ治療が検討されます。入り口が広い大きな動脈瘤は、こぶにコイルを詰めてふさぐ血管内治療が難しいとされてきました。コイルがこぶから飛び出すのを防ぐ新しいステント(金属製の網)が開発され、開頭せずに済む負担が軽いこの治療法も選択できるようになりました。

神戸市在住の50代女性は、視野が白くかすむため、市内の病院を受診したところ、画像検査で、左目裏側の内頸動脈の分かれ目に、最大径約2センチの動脈瘤が見つかりました。

破裂前でも動脈瘤は、5~7ミリの大きさから破裂を防ぐ治療が検討されます。10ミリ以上になると、1年間に100人のうち5人が破裂する程度に危険が高まります。大きなこぶの破裂は大量出血につながるため、女性には早期の治療が必要でした。

動脈瘤の治療は、こぶの根元をクリップで留める手術と、脚の付け根の血管から入れた細い管(カテーテル)を操作してこぶ内にコイルを詰める血管内治療が行われています。

女性の動脈瘤は目の神経に近く、手術では神経を傷つけ、目や顔の動きに障害が出る心配がありました。また、こぶの入り口が7ミリと広く、詰め切る前にコイルがはみ出てしまうため、従来の血管内治療も難しいです。


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脳動脈瘤塞栓術用ステントによる治療

幸いだったことは、2010年7月に新たな脳動脈瘤塞栓術用ステントが保険で使えるようになったことです。こぶの入り口をまたいでステントを置き、その後にコイルを詰める方式です。女性は2010年8月に、神戸市中央区の神戸市立医療センター中央市民病院で治療を受けました。

治療した同病院脳神経外科部長の坂井信幸さんは「ステントがコイルの脱落を防ぐため、すき間なくコイルを詰められます。治療時間も、ステントなしにコイルを詰める場合と比べ、半分以下の1時間半で終わることができました」と話します。

脳動脈瘤塞栓術用ステントは、こぶの最大径が7ミリ以上で、入り口が最大径の2分の1より大きい未破裂動脈瘤の治療に使われます。

国内では1年に3万2000件の脳動脈瘤の手術・治療が行われています。そのうちの25%の8000件が血管内治療です。坂井さんは「年1000件以上は、この新しいステントで行われるでしょう」と話します。同治療は研修を受けた日本脳神経血管内治療学会専門医が行いますが、2011年に約120人に増えるといいます。

外科手術が向いている中大脳動脈治療

大きな脳動脈瘤は、内頸動脈、椎骨動脈、脳底動脈に出来ることが多いいです。これらの血管のこぶには血管内治療が可能ですが、脳表面を覆う中大脳動脈は、分岐が複雑で、外科手術が向いています。

中大脳動脈などに出来た風船のように膨らんだ形のこぶには、両側の血管を挟み、こぶに血が流れないようにした後で、首やこめかみの動脈と血管をつなぎ、血流を回復するバイパス術が行われています。

坂井さんは「大きな脳動脈瘤の治療には、血管内治療、外科手術の両方とも、高い技術が必要です」と話しています。


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関係医療機関

神戸市立医療センター中央市民病院

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