-肥満の減量手術-


肥満の減量手術

肥満治療

大分県在住の40歳代の女性は、20代で2度出産したのをきっかけに、体重が増えました。出産前の約60キロ・グラムから、90キロ・グラムを超え、体を少し動かすだけで動悸(どうき)を感じるようになりました。

大分大病院の肥満外来では、食事療法などを試みましたが、効果がありません。そこで、胃の容積を減らしたり、胃の入り口を狭くしたりする外科治療を受けました。その結果、食べる量が減り、1年半で約20キロ・グラムの減量に成功、高かった血圧やコレステロール、肝機能などの数値も正常に戻りました。

肥満は、糖尿病などの生活習慣病の原因になります。日本肥満学会は、国際的な肥満指標BMI(体重〈キロ・グラム〉を身長〈メートル〉の2乗で割った数値。標準は22)で25以上を肥満とし、高血圧、糖尿病などの合併症がある場合、減量が必要としています。

肥満の治療は一般に、食事療法や運動療法、食欲を抑える薬物療法などを組み合わせて行います。それでも改善されない重い肥満は、外科治療の対象となり、欧米などで年間14万例以上が行われています。

日本では主に開腹して胃を小さくする手術が一部の医療機関で行われてきましたが、体を大きく傷つけるため、実際に受ける患者は少なかったです。


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2つの減量手術

そこで大分大病院は、体への負担が少ない2つの方法を2004年末から導入しました。胃に風船(バルーン)を入れる「胃内バルーン挿入法」(BIB)と、胃の入り口をバンドで縛る「胃バンディング術」です。

胃内バルーン挿入法は、直径約10センチのシリコーン製の風船を胃の中に入れ、胃の容積を小さくし、食べ物の通過時間も遅らせて食事の量を減らします。

口から入れる内視鏡で、しぼんだ状態の風船を胃に入れ、生理食塩水約0・5リットルを入れて膨らませます。施術時間は十数分間で、入院期間も3~4日と短いです。ただし、風船の耐久性や効果の持続性などから、胃の中に風船を入れる期間は最長でも半年です。

同病院でこれまで実施した17人では、施術後5か月で体重が平均10キロ・グラム以上減りました。

一方、胃バンディング術は、腹腔(ふくくう)鏡で腹の内部を見ながら、胃上部をシリコーン製のバンドで締める方法です。少量ずつ、ゆっくり食べるようになって満腹を感じ、食事の量を減らします。

腹腔鏡やバンドを入れるための小さな穴(直径約5ミリ~3センチ)を腹部に開けることから、手術時間は約2時間、入院も5~6日ほど必要ですが、開腹手術に比べ、負担が小さいです。バンドは交換せずに使えるため、胃内バルーン挿入法を行ってから、胃バンディング術を受ける人も多いいです。実施した12人では、体重が1年で平均20キロ・グラム以上減りました。

いずれの治療も、退院後に通院、効果や副作用のチェックが必要です。同大では現時点で、どちらの方法も重大な副作用はなく、糖尿病など肥満に伴う生活習慣病も、過半数の患者で軽くなりました。

ただし、肥満治療の基本はあくまで、食事療法や運動療法です。大分大教授の北野正剛さん(消化器外科)は「外科治療は最終手段。他の治療で効果がなく、BMIが35以上で、重い高血圧、糖尿病など生活に支障のある合併症を持つ患者に限ります」と話しています。BMIが35以上の人は、成人の0・5%程度とされています。

治療は自費診療となり、大分大病院では胃内バルーン挿入法が十数万円、胃バンディング術は約50万円程度かかります。

日本肥満学会などは、これら2つの治療を安全に普及させるため、当面は大学病院などに限って導入する方針です。

その他の減量手術

腹腔鏡下ルーワイ胃バイパス術

最近のアメリカ肥満外科学会などではこの胃バイパス手術がゴールドスタンダードとなってきて、現在アメリカで最も多く行われている減量手術です。

腹腔鏡下袖状胃切除術

胃の大半を切り取り、胃をバナナ1本くらいの大きさにして食事摂取量を制限する手術です。

腹腔鏡下十二指腸転換を伴う胆膵バイパス術(十二指腸スイッチ手術)

この手術はおもに栄養吸収を制限することにより減量をおこないます。

腹腔鏡下スリーブ・バイパス術

手術の基本コンセプトは胃バイパス術と変わりません。すなわち、食事摂取量制限と栄養吸収制限のコンビネーションの手術です。

重症肥満に対する二期的手術

BMIが60をこえる重症肥満の方は、一度で手術をすると死亡率が高くなるといわれています。そのような方には、安全のため一回目の手術で胃を小さくして減量をはかり、減量がとまったところで胃バイパス術をするという二期的手術を行います。


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関係医療機関

大分大学病院

東京大学病院

四谷メディカルキューブ

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